マーケティングとは【定義・歴史を現役マーケターが解説】

そもそもマーケティングとは何か。即答できなくても心配ありません。なぜなら、即答できない理由は、あなたの勉強不足ではないからです。

世の中で「マーケティング」という言葉がいろいろな場面で使われるため、その意味が曖昧になっています。また、著名な学者の間でもその定義は様々です。そこで、この記事の前半では、その定義について、初心者向けに解説したいと思います。

また後半では、マーケティング発展の歴史や企業のマーケティング浸透の段階についても解説します。歴史といっても堅苦しい内容ではなく、発展の流れを知ることで、マーケティングの考えを組織に浸透していく際の参考にもなると思います。

この記事の信頼性は、次の通りです。

  • 筆者がこれまで100冊以上のマーケティング本を読んできたこと(知識)
  • 実際にマーケティングの業務について、某大企業のマーケティング本部のマネージャーを務めていること(実務経験)

定義

マーケティングの定義については様々ありますが、シンプルに言うと、「売れる仕組みづくり」です。

これだけシンプルに言い切ると、マーケティング調査は?製品開発は?価格設定は?宣伝は?など、疑問が湧いてくると思いますが、次を見てもらえれば理解できると思います。

「売れる仕組みづくり」のプロセス

  1. 環境分析・市場分析(外部環境・内部環境)
  2. マーケティング課題の把握
  3. セグメンテーション(市場の細分化)
  4. ターゲティング(ターゲット市場の選定)
  5. ポジショニングの決定(競合製品よりも魅力的に)
  6. マーケティングミックス(4P)
  7. マーケティングの実行計画への落とし込み

このプロセスを見ると、今あなたが思い浮かべた「マーケティング」が、そのどこかに含まれていることがわかります。

例えば、マーケティング調査は、1の環境分析・市場分析に。自社の課題発見・課題把握は、1の内部環境分析や2のマーケティング課題の把握に。商品企画・開発は1〜2の調査に基づき、3〜5のターゲットとポジショニングを設定した上で、6のマーケティングミックス(いわゆる「4P」製品・価格・流通・販売)の各戦略に沿う形で行われます。また、このマーケティングミックスで決定した戦略の実行計画への落とし込みは、7の計画実行に含まれます。

このように見ると、マーケティングの各項目については、このプロセスのどこかに含まれていることがわかりますね。

発展の歴史

誕生

マーケティングの誕生は、100年以上も前に遡るようです。マーケティングという言葉が初めて世に出たのは、1902年、アメリカのミシンガン大学の学報においてということです。

日本でマーケティングの概念が使われるようになったのは、第二次世界大戦以降ということです。以降、マーケティングの重要性に注目が集まるものの、やはりマーケティングが誕生したアメリカと日本では環境が異なります。先ほど説明した定義さえ、日本では明確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。

マーケティングコンセプト

企業のマーケティングに対するスタンスを見ていくと、その企業にどれだけマーケティングが浸透しているかを確認することができます。概ね、次のような段階追って浸透するようになっており、これがまさにマーケティングの発展の歴史とも重なるところとなります。

マーケティングコンセプト(企業のマーケティングに対する志向)

  1. プロダクト志向(マーケティング以前)
  2. 販売志向
  3. 顧客志向・ニーズ志向
  4. 社会志向
プロダクト志向

はじめに製品ありきの考え方。マーケティング以前の考え方ともいえます。とにかく、製品の技術・生産効率などを高め、企業が良いと思う製品をビジネスの中心に置く考え方です。ですので、顧客が何を求めているかということは重視されません。

ただし、物が満たされる社会になると、ただ単に自社が良いと思う製品を作るだけでは、物は売れなくなります。

販売志向

上記のような背景のもと生まれたのが、販売志向です。製品の販売部門を本格的に設置し、販売することに力を注いでいく企業が増えていきます。営業部隊の設置・強化をイメージしてもらうとわかりやすいと思います。

しかし、この志向にも限界があります。それは、プロダクト志向によってできあがった製品を、営業部隊の力によって販売するという点にあります。悪く言えば、「押し売り」ですね。そこには、顧客のニーズという視点が反映されていません。

顧客志向・ニーズ志向

そこで生まれたのが、顧客志向・ニーズ志向という考え方です。

製造部隊(とりわけ研究開発者・技術者)が作りたいものを作るのではなく、また、販売部隊にプロモーションを委ねる点に、限界があります。企業全体が市場のニーズを把握し、求められる製品を開発し、そのニーズに応えられるようなプロモーションをしようという考え方が採用されるようになってきました。

社会志向

顧客志向・ニーズ志向をさらに発展させたコンセプトが、社会志向です。これは顧客のニーズをより広く捉える考え方で、社会のニーズに応えるためのコンセプトと言っても良いかもしれません。つまり、企業の社会的責任や社会貢献という視点を含めた、マーケティングコンセプトです。

例えば、タバコの開発・販売は顧客の視点から見ればニーズがある一方で、健康への悪影響・地球環境への影響も否定できません。これらの視点まで考慮した企業のマーケティングに対する姿勢・コンセプトが社会志向です。

以上の歴史を見ると、製品志向から顧客志向の考え方に移り変わり、そして最終的には、より大きな社会的責任・社会貢献という志向がプラスされていく様子がわかります。

この流れがわかれば、自分の務めている企業のマーケティングの浸透度合いが見えると思います。もちろん、業界によっては、製品開発がとにかく重要であったり、技術開発ありきの尖った製品自体が市場のニーズに応えるようなケースもあるかもしれません。ただし、よっぽど特異な業界でなければ、マーケティングの発展度合い・浸透度合いは、上記のマーケティングコンセプト(志向)によって、確認できるはず。参考にしてみてください。

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