ディズニーのマーケティング戦略【プロモーション編】

大人気のディズニーランドですが、マーケティング視点で見ると一体何が優れているのでしょうか?この記事では、東京ディズニーリゾート(オリエンタルランド)のマーケティング戦略について、少し違った切り口で見ていきたいと思います。ディズニー好きの人にも、マーケティングに興味がある人にも、いつもとは少し違った角度で、お楽しみいただければと思います。

はじめに、当記事の信頼性については、以下の2点となります。

  • 筆者がディズニー好きで、東京ディズニーランド・シーはもちろん、フロリダのウォルトディズニーワールド、香港のディズニーランドにも行ったことがあり、さらにはオリエンタルランドの株も保有しているほど詳しいこと。
  • 筆者が現在、某大手企業のマーケティングマネージャーを務めており、マーケティングに関する基本的な知識と視点を持っていること。

東京ディズニーリゾートとは

そもそも東京ディズニーリゾートはどのようなビジネスなのでしょうか。

ディズニー(オリエンラルランド)の事業について

運営会社は株式会社オリエンタルランドという会社です。その中心は東京ディズニーランド・ディズニーシーのテーマーパーク事業で売上・利益の80%以上を占めますが、その他にも、東京ディズニーランドホテルなどのホテル事業、イクスピアリやディズニーリゾートラインなどのその他の事業も行っています。

ディズニー(オリエンタルランド)の経営について

オリエンタルランドは株式会社ですので、会社の所有は株主となります。2020年3月時点では、京成電鉄株式会社が持株比率22.16%で最大。続いて、三井不動産株式会社の9.09%、千葉県4.03%と続きます。

ディズニー(オリエンタルランド)のプロモーション戦略

いよいよ本題です。ディズニー(オリエンタルランド)のマーケティング 戦略を見ていきましょう。今回は、その中でも、プロモーション戦略の強みについて見ていきたいと思います。

自分でプロモーションをしなくても、他者がしてくれる仕組み

パーク内でゲスト(お客様)が告知してくれる

まずは、ビジネスにおいて重要な顧客一人当たり単価の視点です。テーマパークビジネスの場合ここで大事なのは3点、チケット代、パーク内での飲食代、グッズ・お土産代です。今回は、グッズ・お土産代についてお話しします。

ディズニーランドやディズニーシーに行った方ならわかると思いますが、とにかくゲストが、たくさんのグッズを持ってパーク内を歩いています。例えば、ミッキーマウスの耳型のカチューシャ、ヘアバンド、Tシャツ、パーカー、ポーチ、バッグ、ぬいぐるみなどです。インスタの流行りもあり、カップルや友達同士で同じファッションをして写真を撮るなど、グッズの必要性が高まっていることを感じます。

そして特に驚くのは、ぬいぐるみを持って歩いているゲストが多いことです。ミッキーマウスの人気はもちろんですが、ディズニーシーに行くとダッフィーというクマのキャラクターやその仲間のキャラクターのぬいぐるみを持って歩いているゲストが本当に多くいます。僕がオリエンタルランドのプロモーションの強みを感じたのはまさにこの点。普通なら、できるだけ荷物を減らしてアトラクションなどパークを楽しみたいはずなのに、あえて荷物が増えることも厭わず、自分のお気に入りのキャラクターのぬいぐるみを持って歩いているんです。これもインスタ映えなどを意識してのこともあると思いますが、子供の頃の気持ちに帰って日常を忘れたいなどのニーズに答えるものでもあるように思います。

そして、この様子を見た他のゲストは、もちろんそのグッズが欲しくなります。普段頑張ってるご褒美として、何年かに1度の旅行の記念として、インスタ映えのため、日常を忘れる癒しのため、彼氏からのプレゼントとして・・・。それぞれのニーズがあるものの、他のゲストが持っているグッズは、これらのニーズを引き出すプロモーションとして十分といえます。

パーク外でゲスト(お客様)が告知してくれる

さらに、ゲストがパークを出た後も、プロモーションの影響は続きます。日本はお土産文化が根付いている国。そして、東京ディズニーリゾートのお土産は非常に充実しています。多くの方が学校や職場でお菓子を配ったり、自分が普段使うためのグッズを買って帰るのではないでしょうか(しかもその品質は各国のディズニーランドと比較しても高い)。そのお土産・グッズがいい思い出として語られ、パーク外でも自然にプロモーションを生み出しているのです。

パーク外で他社(ウォルトディズニーカンパニーや他の企業)が告知してくれる

この記事の最初にも記載しましたが、東京ディズニーリゾートの運営会社は、ウォルトディズニーカンパニーではなく、株式会社オリエンタルランドという会社です。これは、つまり、オリエンタルランドがライセンス契約によって東京ディズニーリゾートを運営しているということ。したがって、オリエンタルランドはライセンス料を支払うことにはなるのですが、東京ディズニーリゾートにおけるプロモーションについては、このライセンス契約の強みが存分に活かされていると感じます。

皆さん思い出してください。生活している中で、ディズニーに関する情報をどれだけ目にしますか?ディズニー好きの人については、家の中にディズニーグッズが溢れています。それほどディズニー好きでなかったとしても、いくつかディズニーアイテムがあるのではないでしょうか。ぬいぐるみ、食器、キッチン道具、タオル、ハンカチ、時計、写真たて、Tシャツなどの衣類、エコバッグなど。また、テレビをつければ、ディズニーのアニメや映画なども多く接することとなります。また、家から一歩外に出ても、これらの情報が溢れているのではないでしょうか。1日外出していれば、よく注意さえすれば、一度がディズニーの情報に触れるでしょう。

そして、重要なことは、これらの情報のほとんどが、オリエンタルランドによるものではないということ。ほとんどの場合が、ウォルトディズニーカンパニーのグループによるものか、そのライセンス契約によるものです。それぞれの会社は自社のために商品を作り、販売をしているだけです。しかしその結果、購入者がディズニー関連のアイテムを使用することで、それを見た人は「東京ディズニーリゾート」を想起することになります。これがまさにライセンス契約のメリット・強みになるのですが、プロモーション上のメリットは計り知れません。

語弊を恐れずにいうと、東京ディズニーリゾート(オリエンタルランド)のプロモーションについては、他人(過去のゲストやディズニーグッズを使う方)が勝手に告知をしてくれる仕組みが備わっているということです。