リスティング広告で指名キーワードを出稿すべきかどうか。広告担当者の悩みの一つではないでしょうか。「オーガニック検索で流入させることができるから、指名キーワードは出稿しなくてよいのでは?」など、判断に迷うことも多いはず。しかも、インターネットで調べても、広告代理店に聞いても、いまいちしっくりくる回答が出ない。でも理由は簡単。個別のケースに照らさなければ、具体的な判断ができない問題だからです。以下では、ケース別に一つの考え方を示していきたいと思います。
リスティング広告における指名キーワード・一般キーワードって?
指名キーワードとは
指名キーワードとは、自社の名前や自社のブランド名・商品名などのキーワードのことです。例えば、AppleやiPhoneなど、社名や商品名を思い浮かべていただければと思います。
一般キーワードとは
一般キーワードとは指名キーワード以外のキーワードを言いますが、社名や商品名でもない一般的な商品カテゴリーをイメージしてもらえればと思います。例えば、スマートフォン、カフェ、転職エージェントなどが一般キーワードにあたります。
指名キーワードと一般キーワードの違い・特徴
自社商品の「指名買い」をイメージしてもらうとわかりやすいと思いますが、まず、検索者の購入モチベーションが大きく違います。先ほどの例でいくと、「スマートフォン」と検索するよりも「iPhone」と検索する人の方が、iPhoneの購入に向けたモチベーションが高いことは明確だと思います。また、「カフェ」と検索する人よりも、「スターバックス」と検索する人の方が、スターバックスの利用に向けたモチベーションが高いはずです。
その結果、検索者のうち、実際に購入に至る割合(CVR、コンバージョン率)や、購入1件を獲得するのにかかる費用(CPA、コンバージョン単価)についても、指名キーワードと一般キーワードでは大きく異なることとなります。
指名キーワードを出稿するメリット
それでは、指名キーワードを出稿するメリットについて、見ていきます。
とにかく検索画面の上位に表示させることができる
まずは、実際の検索画面をイメージしてみてください。リスティング広告では、入札単価や広告の質などが総合評価されて検索画面への表示順位が決まりますが、ここで上位表示させることができれば、とにかく検索者の目に留まることが可能です。
「最近では、多くの検索者がリスティングの広告面であること理解し、この広告面に表示される内容については軽視される傾向にある」というようなことも言われますが、やはり検索画面の上部に表示され、検索者の目に飛び込んでくるという点は事実としてあると思います。
告知面を増やすことができる
上記と重なる部分もありますが、検索結果に表示させることで、告知面を増やすことができます。特に、自然検索(オーガニック)でも上位表示させることができる場合は、自社の広告と自社の自然検索の結果によって、検索結果の1ページ目において、大きく告知面を占有することが可能となります。
これらの結果として、①指名キーワードの検索者について、競合他社への流出を防いだり、②告知面の確保により認知を高める施策とすることができます。
指名キーワードを出稿すべきケース
指名キーワードの出稿については、上記のようなメリットがありますが、「指名キーワードで検索するような人であれば、わざわざ広告を出さなくても、自然検索で自社のサイトにたどり着くのではないか」とも考えられます。そうだとすると、指名キーワードの広告を出稿することで、無駄に広告費を使ってしまうことになりかねません。
そこで、「指名キーワードを出稿すべきケース」について、具体的に見ていきたいと思います。
自社サイトの検索順位が上位表示されないケース
まずは、自社サイトができたばかりといった場合や、サイトのSEO対策が上手くいっていない場合など、自然検索で自社サイトが上位表示されないケースです。
このようなケースでは、いくら自社名・自社商品名を検索してもらえたとしても、実際に自社サイトまでたどり着いてもらえない可能性があります。したがって、このようなケースでは、自然検索で上位表示されるようになるまでの期間については、リスティング広告で流入ルートを補ってあげる必要があります。
競合他社にリスティングの上位枠を抑えられると、他社への相当数の流出が想定されるケース
次に、自然検索で自社サイトが比較的上位に表示されるという場合であっても、リスティングの枠を他社に抑えられると、他社の流出が想定されるケースがあります。
前提として、他社名や他社の商品名のキーワードで他社が出稿するのはルール違反となりますが、業界によってはそのような戦いが繰り広げられているケースも。また、「自社名+一般キーワード」で検索がされた場合、「一般キーワード」の部分一致として、広告が掲載される場合もあります。つまり、仕組み的には、「Apple+スマートフォン」で検索がされた場合に、SONYが出す「スマートフォン」の広告が、部分一致で表示されるケースもあるということです。
ここでの判断のポイントは、「自社商品が他社商品とどれだけ差別化できているか」です。先ほどの例でいくと、「Apple+スマートフォン」で検索した場合に、部分一致でSONYのスマートフォンXperiaの広告が出てきたとします。この時に、AppleやiPhoneに圧倒的なブランド力があり、他社商品と差別化できていれば、ほとんどの場合Xperiaの広告は無視され、ほとんど問題とならないでしょう。
難しいのは、このようなケースでも、「SONYのXperiaに全く流れないか」というとそうではないということです。なんとなくXperia広告をクリックして、サイトを眺めている間に、知らなかった魅力に気付き、最終的にはXperiaを購入するというケースももちろんあります。あとは、費用対効果・確率の問題で、どこまで指名キーワードで取りにいくかというのは、経営判断にも近いものとなっていきます。
指名キーワードで出稿すべきかどうかの判断基準は?
そこで、判断基準が必要となります。ここで大事なのは、「売上(さらに言えば利益)を最大化するためのお金のかけ方を選ぶこと」です。
ここまで言ってしまうと理想論になってしまいそうですので、もう少し判断可能な基準に落とし込むとすれば、「広告以外のルートを含めたコンバージョン(申込や資料請求等)が最大化するように、広告の出稿を配分すること」です。
例えば、iPhoneのリスティング広告をやめたとして、iPhone全体の売上・購入数が下がるかどうかという基準です。そこまでが難しければ、iPhoneのリスティング広告をやめて、iPhoneのサイトへの流入数が減少したかどうか。もちろん、評価には他のプロモーション(TVCMなど)の影響を排除する必要があるので注意が必要です。
指名キーワードのリスティングをやめても、全体としてのコンバージョン獲得は減少しない。さらに言えば、リスティングをやめた分の広告費用を他の広告やSEO施策に回すことで、指名キーワードでリスティングを実施していた時よりも全体としては多くのコンバージョンを獲得できる。このような基準で判断していくことが必要となります。
Web広告担当者の皆さんへ
業界にもよると思いますが、現状ではリスティング広告における指名キーワードの出稿は、実施するのが一般的だと思います。しかも、Web広告担当者としては、Wev広告のみで実績評価されることも多く、なかなか指名キーワードの出稿停止に踏み切ることが難しいと思います。当然、広告代理店の方は多くの広告を出稿してほしいため、CPAの安定する指名キーワードの出稿を勧めるのも自然な流れですね。
そんな中で、Web広告担当者ができることは何でしょうか?まずこれだけは絶対にしておいてほしいのが、「指名キーワードと一般キーワードの実績を分けて把握・評価する」ということです。改めて言うまでもありませんが、指名キーワードと一般キーワードは同じリスティングと言ってもその狙いや価値は全く異なるため、そもそもこれらが混ぜて評価されていること自体、ミスリードを産んでしまう可能性があります。そして、経営の視点・全体の視点で、指名キーワードへの出稿を抑えていく判断となった際に、リスティングで残った一般キーワードだけでは、CPC・CPAは必ず高騰したように映ります。その状況を後から説明するのは難しく、経営層に理解してもらうのも一苦労です。
そして、ご自身が一人のWeb広告担当者から、マーケティング責任者、経営層にキャリアアップしていく際に、全体の費用対効果を判断していく場面が必ず出てきます。その未来に備えて、今から少しずつ、指名キーワードと一般キーワードのリスティング広告整理に着手しませんか?